唯一無二の世界
九谷毛筆細字
田村敬星展
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金彩の花瓶に限りなく和歌を描いた大作。観る者を驚嘆させます。
●倭歌金彩草花文花瓶
(磁器/径25.5×高さ30.5cm)
7,150,000円〈限定1点〉
流麗に文字を綴る、精緻な技の極み。
磁器に流麗な文字を極細の筆で緻密に描き込む「毛筆細字技法」。明治以降、九谷焼の世界で独自の発展を遂げ、現在まで一世紀以上に亘り、田村家に一子相伝の技法として受け継がれています。描かれる題材は、主に万葉集や百人一首などの和歌や古典文学。細字はマンガンを原料とした釉薬で描かれた後、約800度で焼成されます。粘性のある釉薬を用いて極小の文字を描くことは難しく、技術の習得には長い年月を要します。曲面の多い素磁に整然と文字を配列し、絵付け全体とのバランスを図るために、作業は基本的には裸眼で行います。また、器の内側に描く際は、縦の線は下から上に引くなど通常とはまったく異なる書き順を用いるなど、独自のさまざまな工夫が凝らされています。極小ながら書としての美を湛えた精緻な文字と鮮やかな絵付けが織りなす格調高い作風が秀逸です。本展では、敬星氏の作品、約70点を一堂に展覧いたします。超絶技巧による雅な世界を、ぜひお楽しみください。
ごあいさつ
釉薬を載せた硝子盤を傍らに置き、息を吸い、息を止め、たとえば掌にすっぽりと収まる程の小さな盃の見込みに、筆先の加減を窺いながら一文字一文字描き入れていく。
他人から見れば些末にみえるであろう拘りにも飽くことはない。
集中が極限に達する時、周囲の雑音は止み、外界から切り離された己の心身が、筆先から広がる無限の世界に没入していく。創作の自由な世界に身を浸す高揚感に満ちている。
九谷の色彩と共に、描き連ねた和歌のただ三十一文字に凝縮された、古の人の悲喜交々の豊かで壮大なドラマが器体に立ち上がってくる。それが己の心象風景と重なるとき、自分もまた先達からの脈々とした繋がりに生かされ、今日の制作の場があることに気付き、深い感動を覚える。各世代が繰り返してきた同じ日々こそが、先の道につながっている。
九谷毛筆細字の「唯一無二の世界」をご高覧いただければ幸いです。
田村敬星
[ 田村敬星 ] Profile
1969年祖父金星に師事する。1977年日本伝統工芸展初入選。1979年日本陶芸展初入選。1983年日本工芸会正会員認定。1989年伝統九谷焼工芸展大賞受賞。1995年「細字君が代茶碗」献上制作。九谷焼資料館にて「清山・金星・敬星:細字三代展」開催。2005年石川県指定無形文化財九谷焼技術保存資格保持者に認定。2019年「超絶の世界展」瀬戸内市立美術館出品。
作家来場
9/12(木)~15(日) 各日午後1時~5時
※諸般の都合によりスケジュールが変更になる場合がございます。
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作陶半世紀を迎えた年に発表した作品。気持ちをあらため、自身の新たな船出の心境を表しています。
●倭歌帆船彩色卓台香炉
(磁器/幅10.8×奥行10.8×高さ22.2cm)
2,200,000円〈限定1点〉 -
古から九谷に伝わる九角皿に古九谷の彩色、そして百人一首を一糸乱れぬ配列で綴っています。
●百人一首草花文九角皿
(磁器/幅37.2×奥行37.2×高さ6cm)
1,650,000円〈限定1点〉